私が20歳になるすこし前、
世の中はバブル経済の兆しであちこちで大きなイベントがあった。
とある博覧会場で場内アナウンスをすることになったのだが、
そこには一人だけ、別のツテでやってきた、当時27歳の姐さんがいた。
姐さんはフリーMCで、
ブライダル・イベント・式典・ラジオと場内放送以外でも飛び回っていた。
マイクの前では華やかな笑みがほころび、
しゃべりだせば、的確で明瞭な技術。
彼女と同じシフトで交互に放送していると スタッフの兄ちゃんが入ってきて、
「おはな!ちゃんとせぇ!力量に差がありすぎるぞ!」 といわれた。
姐さんは慰めるでもなく、
「そうや、ちゃんとせんかい。」「他人に厳しく自分に甘く、これが私の生きる道~♪」
みたいなことを言っていた。
さわやかでおもしろくて全てのスタッフに気遣いの出来る オトナの女。
憧れついでに、 姐さんの持っている仕事用の道具を何気にチェックし
似たようなものを買い求め悦に入っていた。と、同時に、
「自分が27歳になったとき、この人と同レベルか超えるかする」
彼女を目標に定めた。
3年後、また違った博覧会場でラジオ放送に関わっていたとき、
この姐さんが陣中見舞いにやってきた。
私の顔を見るなり
「あんた、基本大事にしてないな。調子乗っとったらあかんで。」と言い放った。
私は久しぶりの嬉しさから「そんなん言わんといてくらはいよぉ。」 と甘えてみたが、
「基本をおろそかにするやつはこの世界から去れ」 が答えだった。(撃沈)
このときも彼女は、他人に厳しく自分に甘く・・・と笑いながら
スケジュールが慌しいから とあっという間に消えていった。
実はホントにあの頃、基本のことなど蚊帳の外で、
メディアにのる自分の声がただ嬉しく、揚揚としていたのだ。
すこし舞い上がっていた自分を、ぴしっと指摘された。
ありがたかった。
そして私が27歳のころ。姐さんに追いついたのかどうか自分ではなんともいえないが
ありがたいことにかなり忙しかった。
そりゃもう今にして思えば、「ようやった」の一言につきる。
「他人に厳しく自分に甘く」
自分を甘やかさず、誰よりも己を律する人が言えるはずの
いまだに思い出してはくすっと笑える、ちょっと好きな一言です。
姐さんの「今」は風の便りに聞きますが。いまだにかなり好きな、大先輩です。
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